データサイエンティストの将来性・AIの進化により需要がなくなる可能性は?

データサイエンティスト

2023.06.28

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ChatGPTが世界的に注目を集める中、データサイエンティストの将来性に不安を感じている方は多いようです。 ビッグデータの活用に取り組む企業の増加に伴い、ビッグデータを有効活用するためのスキルを持つデータサイエンティストの需要も増加傾向にありますが、今後、AI技術の進化によりデータサイエンティストの需要がなくなる可能性はあるのでしょうか。 この記事では、データサイエンティストの需要や将来性について詳しく解説します。

1.データサイエンティストの需要は増加傾向

以下の理由により、データサイエンティストの需要は増加傾向にあると考えられます。

 

・ビッグデータの活用に取り組む企業が増えている

・データサイエンティストは不足している

・経済産業省がデータサイエンティスト育成に力を入れている

 

それぞれの理由について詳しく説明します。

 

(1)ビッグデータの活用に取り組む企業が増えている

 

近年、さまざまな業界で業務の効率化や改善などを目的として、ビッグデータを活用したデジタル化に取り組む企業は増えています。

 

総務省が公開した「通信利用動向調査」によると、令和3年(2021年)時点でデジタルデータの収集・解析などを行うシステムやサービスを導入している、または導入を予定している企業の割合が26.5%に達しました。令和元年は23.9%、令和2年は22.2%だったので、増加傾向にあることがわかります。

 

参考URL:令和3年通信利用動向調査の結果(総務省公式サイト)

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf

 

総務省はビッグデータ・ポータルでビッグデータの活用事例を公開しています。どのようなビッグデータが収集・活用されているのか、さまざまな分野の実例を確認できるので参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

(2)データサイエンティストは不足している

 

ビッグデータを活用したデジタル化が進む中、デジタル人材(AI・データ解析の専門家)の不足が大きな課題となりつつあります。

 

経済産業省のIT政策実施機関である独立行政法人情報処理推進機構 (IPA)が公開している「DX白書2023」では、DXを推進するデジタル人材について49.6%の企業が「大幅に不足している」と回答しています。「やや不足している」(33.9%)と合わせると、8割以上の企業がデジタル人材不足という問題に直面していることになります。DX推進の中心的な役割を担うデータサイエンティストも不足しているのが現状だといえるでしょう。

 

(3)経済産業省がデータサイエンティスト育成に力を入れている

 

産業全体の競争力強化や社会の課題解決のため、経済産業省はデータサイエンティストをはじめとする、デジタル人材の育成に力を入れています。デジタル人材育成のために、経済産業省は「デジタル人材育成プラットフォーム」と「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を運用しています。

 

デジタル人材育成プラットフォームには、「マナビDX」と「マナビDXクエスト」の2つのサイトがあります。

「マナビDX」は初学者の方でも自らデジタルスキルを学べるように、オンラインで教育コンテンツを紹介しているサイトです。「DXリテラシー標準」を学習すると、社会人が身につけておくべき標準的なデジタルスキルを無理なく習得することができます。

「マナビDXクエスト」はケーススタディ教材を用いてグループで課題解決プロセスを疑似体験するオンライン教育プログラムです。2022年度に「AI Quest」から「マナビDXクエスト」へと名称が変わりました。

参考URL:デジタルスキル標準(経済産業省公式サイト)

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html

 

「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」は、将来成長が見込まれるAIやデータサイエンスなどの分野で社会人が高度な専門性を身に付けるための実践的な教育訓練講座を認定する制度です。厚生労働省の「専門実践教育訓練給付金」とも連携しているため、一定の条件を満たす場合、入学金・受講料の50~70%が支給されます。

2.将来データサイエンティストの需要がなくなる可能性

将来データサイエンティストの需要がなくなる可能性はあるのでしょうか。以下の2つの観点から考えてみます。

 

・AI技術の発展により仕事がなくなる可能性

・職種が細分化される可能性

 

(1)AI技術の発展により仕事がなくなる可能性

 

「将来AI技術がさらに発展すれば、データサイエンティストの仕事はAIに取られてしまうのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、逆にAI技術の発展によりデータサイエンティストの需要は増え続けると考えられます。

 

AI技術は急速な勢いで進化しており、データ収集や分析などは、AI技術に代替される可能性があります。しかし、データサイエンティストの業務はデータ収集や分析だけではありません。

 

IPAは、データサイエンティストの役割を以下のように定義しています。

“DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材

引用元:「デジタルスキル標準ver.1.0」(IPA・経済産業省)

 

 

「データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用」の一部はAIに代替される可能性がありますが、「データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて」これらの仕組みをどのように設計するべきかを考えることは人が担うべき役割ではないでしょうか。

AI技術の発展とともに、AI技術を駆使して業務の改革や新しいビジネスの創出を実現できるデータサイエンティストの需要はさらに拡大すると考えられるでしょう。

 

(2)職種が細分化される可能性

 

データサイエンティストの業務内容は幅広いため、企業側が必要な人材やスキルを明確にすることが難しいという課題があります。その課題を解決するために、データサイエンティストの職種を細分化するという考え方があります。

 

IPAは、データサイエンティストに求められる3つの力であるビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力に基づき、データサイエンティストを以下の3つに分類しています。

”・データビジネスストラテジスト:事業戦略に沿ったデータの活用戦略を考えるとともに、戦略の具体化や実現を主導し、顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する

・データサイエンスプロフェッショナル:データの処理や解析を通じて、顧客価値を拡大する業務の変革やビジネスの創出につながる有意義な知見を導出する

・データエンジニア:効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を通じて、顧客価値を拡大する業務変革やビジネス創出を実現する

引用元:「デジタルスキル標準ver.1.0」(IPA・経済産業省)

 

今後、上記のようなデータサイエンティストの職種の細分化が進む可能性はあるでしょう。細分化が進むことで、企業側は自社の目的や戦略に則した人材を確保・育成しやすくなります。また、データサイエンティスト側は、自分の得意分野や興味のある領域から、自らが進むべきキャリアを明確にすることができます。

3.長く活躍できるデータサイエンティストになるために必要な能力

長く活躍できるデータサイエンティストになるためには、以下の3つの能力が必要です。

 

コミュニケーション能力

・ビジネスモデルや業務を理解する能力

・AI技術を使いこなすスキル

 

それぞれの能力について具体的に説明します

 

(1)コミュニケーション能力

 

データサイエンティストは、業務を進める中で社内外のさまざまな人と連携する機会があるため、コミュニケーション能力が求められます。

例えば、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現のためには以下のような業務が必要です。

 

・自社またはクライアントが抱えるビジネスの課題や要望のヒアリング

・他のメンバーとのデータ分析結果の共有や意見交換

・データ分析環境構築後の現場のユーザーに対する教育

 

上記の業務を円滑に進めるためには、コミュニケーション能力が必要不可欠です。

 

(2)ビジネスモデルや業務を理解する能力

 

データサイエンティストとして活躍するためには、ビジネスモデルや業務を深く理解する能力が必要です。

 

データ分析手法を駆使してビジネスにおける根本的な課題を解決するためには、ビジネスモデルや業務内容の全体像を把握して課題の本質を理解することが不可欠です。そのためには、ビジネスモデルを熟知している経営陣や現場の担当者から必要な情報をヒアリングすることが求められます。

 

(3)AI技術を使いこなすスキル

 

データサイエンティストはデータを活用してビジネス課題を解決するため、AIを使いこなすスキルが求められます。

AIを使いこなすためには以下のような知識が必要です。

 

・データ分析効率化のためのプログラミングやクラウドサービスに関する知識

・AI技術を駆使してビジネス課題を解決するなど、目的に応じた分析をするためのデータサイエンスの知識

・個人情報や企業の機密情報が漏洩を防ぐためのセキュリティやコンプライアンスの知識

 

上記のように、AIを使いこなすためにはAI技術に関するスキルだけではなく、ビジネスの課題を理解して目的に応じた分析をするスキルやセキュリティやコンプライアンスに関する知識など、幅広いスキルや知識が必要です。

4.データサイエンティストの需要が高い業界

IPA が公開した「DX白書2023」の「第2部 国内産業におけるDXの取組状況の俯瞰」では、産業別のDXの取組状況が紹介されています。DX取組状況の割合が30%以上と高いのは以下の業界でした。

 

・情報通信業

・金融業,保険業

・電気・ガス・熱供給・水道業

 

それぞれの業界におけるデータサイエンティストの需要について説明します。

 

(1)情報通信業

 

情報通信業界では、現在急速な勢いでデータサイエンティストの需要が高まっています。

特に、IoT、SaaS、API、メタバースなどのデータ分析や処理技術が必要なサービスで需要が増加傾向にあります。

例えば、自治体(道の駅)と連携した直販所商品の売れ行き状況の可視化、配信による販売促進やAIによる魚雌雄自動判別ソリューションの創出などが挙げられます。

 

(2)金融業・保険業

 

金融業や保険業では、大量の顧客情報を取り扱うことから、データ分析や機械学習、人工知能(AI)を活用することで業務の効率化や顧客満足度の向上を図る取り組みが進んでいます。

例えば、AI保険金査定システムによる顧客利便性向上、完全デジタルな銀行の設立とエンベデッドファイナンスの実現などが挙げられます。

 

(3)電気・ガス・熱供給・水道業

 

電気・ガス・熱供給・水道業は日々の生活に欠かせないインフラ産業であり、人々の暮らしや産業活動において不可欠な役割を担っています。

このようなインフラ産業でもデータサイエンティストの需要が高まっており、データ分析を活用した効率化や省力化、さらには品質向上などの取り組みが行われています。

例えば、配電設備画像データによる点検業務効率化・省力化やエリア混雑・予測情報等を公開する市民向けおでかけ支援サービスの取り組みなどが挙げられます。

まとめ

この記事では、データサイエンティストの将来と需要、データサイエンティストの需要が高い業界などについて解説しました。

 

データサイエンティストは将来性もあり、今後も需要が増え続けると予想されますが、AI技術の発展によりデータの収集や分析などの一部の業務は代替される可能性があります。AI技術がさらに進化してもビジネスの場で活躍できるデータサイエンティストになるためにはデータサイエンスや統計に関する知識とスキルだけではなく、ビジネスモデルや業務を深く理解してAI技術を駆使して課題を解決するスキルを習得することが求められます。

 

データミックスでは、データサイエンティストに必要な基礎知識を体系的に学べるだけではなく、分析手法を駆使してビジネスの課題を解決するための思考力を持つデータサイエンティストの育成を目指す本格的なデータサイエンティスト育成講座を提供しています。

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