マシンラーニングとは?AIやディープラーニングとの違いについて解説

データサイエンス

2024.08.16

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近年、人工知能(AI)技術の発展により、「マシンラーニング(機械学習)」という言葉をよく耳にするようになりました。この記事では、マシンラーニングの基本概念や、AIやディープラーニングとの違いについて、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。

マシンラーニングとは

この章では、マシンラーニングの基本的な概念と仕組みについて詳しく説明します。

 

マシンラーニングの定義

 

マシンラーニングとは、コンピュータがデータから自動的に学習し、パターンを見つけ出す技術です。人間が一つ一つ細かい指示を与えなくても、コンピュータ自身がデータから法則性を見つけ出し、新しい状況に対応できるようになります。

簡単な例で説明すると、果物の分類を考えてみましょう。従来のプログラミングでは、「もし丸くて赤ければリンゴ、細長くて黄色ければバナナ」というようなルールを人間が一つ一つ書く必要がありました。しかし、マシンラーニングでは、多くの果物の画像とその名前のデータを与えることで、コンピュータ自身が特徴を学習し、新しい果物の画像を見ても正しく分類できるようになるのです。

 

マシンラーニングの仕組み

 

マシンラーニングの基本的な流れは以下のようになります。

 

⑴データ収集

学習に使用する大量のデータを集めます。例えば、果物の分類なら、たくさんの果物の写真とその名前のデータを集めます。

 

⑵データ前処理

集めたデータを整理し、コンピュータが扱いやすい形に整えます。例えば、画像のサイズを統一したり、ノイズを除去したりします。

 

⑶特徴抽出

データから重要な特徴を取り出します。果物の例では、色、形、大きさなどの特徴を抽出します。

 

⑷モデル選択

問題に適した学習アルゴリズムを選びます。これは、コンピュータが学習するための「方法」を決めるステップです。

 

⑸トレーニング

選んだモデルにデータを与えて学習させます。コンピュータが繰り返しデータを見て、パターンを見つけ出していきます。

 

⑹評価

学習したモデルがどれくらい正確に予測できるか、テストデータを使って確認します。

 

⑺予測・推論

新しいデータに対して予測や判断を行います。例えば、見たことのない果物の写真でも、正しく分類できるかテストします。

 

この過程を通じて、マシンラーニングモデルは徐々に賢くなり、より正確な予測や判断ができるようになります。

マシンラーニングの種類

マシンラーニングには主に3つの学習タイプがあります。それぞれの特徴と、身近な例を挙げて説明します。

 

①教師あり学習

 

教師あり学習は、正解がわかっているデータを使って学習する方法です。例えるなら、先生(人間)が生徒(コンピュータ)に正解を教えながら学習させるイメージです。

 

身近な例

  • ・スパムメール検出:多くのメールとそれがスパムメールかどうかのラベルを与えて学習させます。
  • ・画像認識:様々な動物の写真と、その動物の名前を与えて学習させます。

 

②教師なし学習

 

教師なし学習は、正解のラベルがないデータから、自動的にパターンや構造を見つけ出す方法です。例えるなら、生徒(コンピュータ)が自分で試行錯誤しながら法則性を見つけ出すイメージです。

 

身近な例

  • ・顧客のグループ分け:購買データから似た傾向を持つ顧客グループを自動的に見つけ出します。
  • ・ニュース記事の分類:多くの記事を分析し、似たトピックの記事をグループ化します。

 

③強化学習

 

強化学習は、行動を取り、その結果に応じて報酬や罰を与えることで、最適な行動を学習する方法です。例えるなら、迷路を解くネズミが、ゴールにたどり着くたびにご褒美をもらって学習するイメージです。

 

身近な例

  • ・ゲームAI:チェスや囲碁のAIプレイヤーが、対戦を重ねて戦略を学習します。
  • ・自動運転:様々な交通状況での適切な操作を、シミュレーションを通じて学習します。

マシンラーニングのメリット

マシンラーニングを活用することで、様々なメリットが得られます。以下に主なメリットを説明します。

 

①自動化と効率化

 

人間が手作業で行っていた仕事を、マシンラーニングを使って自動化することができます。例えば、大量の文書を分類する作業や、製品の品質チェックなどを高速かつ正確に行えるようになります。

 

②パターン認識と予測精度の向上

 

人間には気づきにくい複雑なパターンや関係性を、マシンラーニングは見つけ出すことができます。例えば、多くの要因が絡み合う株価の予測や、複雑な医療データからの病気の早期発見などに役立ちます。

 

③パーソナライゼーション

 

ユーザー一人一人の好みや行動パターンを学習し、個別に最適化されたサービスを提供できます。例えば、動画配信サービスでの視聴者におすすめの番組の提案や、ECサイトでの商品レコメンデーションなどに活用されています。

マシンラーニングとAIとの違い

マシンラーニングとAI(人工知能)は密接に関連していますが、同じものではありません。ここでは、両者の違いと関係性について、わかりやすく説明します。

 

AIの定義と範囲

 

AI(Artificial Intelligence:人工知能)は、人間の知能を模倣し、学習、問題解決、パターン認識などの知的な振る舞いを行うことができるコンピュータシステムや機械を指す広い概念です。簡単に言えば、AIとは、「人間のように考え、行動できる機械」を作ろうとする技術の総称と言えます。

 

AIには以下のようなものが含まれます。

 

  • ・自然言語処理(人間の言葉を理解し、生成する)
  • ・画像認識(画像や映像の内容を理解する)
  • ・音声認識(人間の声を理解する)
  • ・推論と問題解決(与えられた情報から結論を導き出す)
  • ・ロボット工学(物理的な動作を制御する)

 

マシンラーニングの位置づけ

 

マシンラーニングは、AIを実現するための重要な技術の一つです。つまり、AIという大きな目標を達成するための具体的な方法の一つがマシンラーニングだと言えます。

マシンラーニングは、データから学習し、パターンを認識し、予測や意思決定を行う能力を獲得するAIの一分野です。これにより、AIシステムは経験から学び、新しい状況に適応できるようになります。

 

AIとマシンラーニングの関係性

 

AIとマシンラーニングの関係を、例を使って説明しましょう。

AIを「料理人」だとすると、マシンラーニングは「料理の技術」の一つです。料理人(AI)は、様々な技術を使って美味しい料理を作ります。その中でマシンラーニングは、例えば「材料の組み合わせを学習して新しいレシピを考案する」といった役割を果たします。

具体的な例として、自動運転車を考えてみましょう。

 

  • ・AI:自動運転システム全体(道路状況の認識、経路選択、車の制御など)
  • ・マシンラーニングの役割:
  • ・交通標識や歩行者の認識(画像認識)
  • ・他の車の動きの予測(パターン認識)
  • ・最適な運転行動の学習(強化学習)

 

このように、AIはより大きな枠組みや目標を示し、マシンラーニングはその目標を達成するための重要な手法の一つとして位置づけられます。

マシンラーニングとディープラーニングとの違い

マシンラーニングとディープラーニングは密接に関連していますが、いくつかの重要な違いがあります。ここでは、両者の違いをわかりやすく説明します。

 

ディープラーニングの定義

 

ディープラーニング(深層学習)は、マシンラーニングの一種で、人間の脳の神経回路を模倣した多層の人工ニューラルネットワークを使用して学習を行う手法です。「ディープ(深い)」という名前の通り、多くの層を重ねた複雑なネットワーク構造が特徴です。この多層構造により、ディープラーニングは非常に複雑なパターンや抽象的な特徴を捉えることができます。

 

マシンラーニングとディープラーニングの主な違い

 

ここでは、マシンラーニングとディープラーニングの主な違いについて4つご紹介します。

 

①複雑性と抽象度

マシンラーニングとディープラーニングの最も大きな違いの一つは、データから特徴を抽出する方法にあります。

マシンラーニングでは、一般的に人間が設計した特徴を基に学習を行います。例えば、手書き文字の認識タスクでは、文字の形や線の特徴を人間が事前に定義し、それらの特徴を基にアルゴリズムが学習します。このアプローチは、問題が比較的単純で、重要な特徴が明確な場合に効果的です。

一方、ディープラーニングは複雑な多層ネットワークを使用し、データから自動的に特徴を抽出します。手書き文字の認識の例では、多くの文字画像を与えるだけで、重要な特徴を自動的に見つけ出します。この自動特徴抽出の能力により、ディープラーニングは非常に複雑なパターンや抽象的な概念を学習することができます。

 

②データ量と計算リソース

マシンラーニングとディープラーニングでは、必要なデータ量と計算リソースに大きな違いがあります。

マシンラーニングは比較的少ないデータでも学習が可能で、一般的なコンピュータでも実行できることが多いです。例えば、猫の画像認識タスクでは、数百から数千の画像サンプルで十分な精度を得られる場合があります。

これに対し、ディープラーニングは大量のデータと高性能な計算リソース(GPUなど)を必要とします。同じ猫の画像認識タスクでも、ディープラーニングモデルでは数万から数百万の画像サンプルが必要になることがあり、学習に長時間かかります。この大量のデータと計算リソースの要求は、ディープラーニングの大きな課題の一つですが、同時に非常に高い精度を実現できる要因でもあります。

 

③精度と適用範囲

マシンラーニングとディープラーニングは、それぞれ得意とする分野が異なります。

マシンラーニングは構造化されたデータ(表形式のデータなど)の処理に適しています。例えば、顧客の購買予測では、年齢、性別、過去の購買履歴などの明確な特徴を使用して予測を行います。これらの特徴は人間にとって解釈しやすく、モデルの挙動を理解しやすいという利点があります。

一方、ディープラーニングは非構造化データ(画像、音声、テキストなど)の処理に優れています。顧客の購買予測の例でも、ディープラーニングを使用すれば、上記の特徴に加えて、顧客のSNS投稿や閲覧履歴など、複雑で非構造化されたデータも活用することができます。この能力により、ディープラーニングは画像認識や自然言語処理などの複雑なタスクで特に高い性能を発揮します。

 

④解釈可能性

マシンラーニングとディープラーニングの重要な違いの一つに、モデルの解釈可能性があります。

マシンラーニングは比較的シンプルなモデルを使用するため、結果の解釈がしやすい場合が多いです。例えば、ローン審査のタスクでは、「年収が高く、返済履歴が良好なため、承認」といった具合に、判断の理由を明確に説明することができます。この解釈可能性は、特に金融や医療など、意思決定の根拠が重要視される分野で大きな利点となります。

一方、ディープラーニングは複雑な多層構造のため、モデルの判断プロセスを理解することが難しい「ブラックボックス」問題があります。ディープラーニングモデルは非常に高い精度で判断を下すことができますが、なぜその判断に至ったかの説明が難しい場合があります。この解釈可能性の低さは、ディープラーニングの大きな課題の一つであり、特に重要な意思決定を行う場面での適用に際しては慎重な検討が必要です。

 

これらの違いを理解することで、マシンラーニングとディープラーニングのそれぞれの長所と短所を把握し、問題に応じて適切な手法を選択することができます。両者は対立する概念ではなく、それぞれの特性を活かして相補的に使用されることも多く、実際のAIシステムでは両方の技術を組み合わせて使用することがあります。

まとめ

マシンラーニングは、データから学習し、パターンを認識し、予測や判断を行う能力を持つ技術です。AIの重要な一部分として、様々な産業や日常生活に革新をもたらしています。

マシンラーニングは今後も進化を続け、私たちの生活やビジネスにさらなる変革をもたらすことが期待されています。一方で、データの扱いやプライバシー、モデルの公平性など、技術の発展に伴う課題にも注意を払う必要があります。

マシンラーニングの基本概念を理解し、その可能性と課題を認識することで、この技術を効果的に活用し、より良い未来を創造することができるでしょう。

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