【機械学習入門】クラスタリングとは?メリットや活用事例を紹介

データサイエンス

2024.08.26

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近年、ビッグデータの時代を迎え、膨大なデータから有用な情報を抽出する技術がますます重要になっています。その中で、「クラスタリング」は機械学習の重要な手法として注目を集めています。この記事では、クラスタリングの基本概念からメリット、そして活用事例まで、わかりやすく解説します。

機械学習におけるクラスタリングとは

クラスタリングは、機械学習の一部で、特に「教師なし学習」の一種です。これは、データを自動的にグループ(または「クラスタ」)に分ける手法で、各グループ内のデータは似たような特徴を持ち、異なるグループのデータは異なる特徴を持つという考え方に基づいています。

クラスタリングの特徴は、事前に正解ラベルを用意する必要がないという点です。つまり、データ自体から自然にグループを見つけ出すことができます。

クラスタリングの目的として、以下のようなものが挙げられます。

 

①データの構造やパターンの発見

 

クラスタリングを用いると、データの中に存在する自然なグループやパターンを見つけ出すことができます。これは、データの理解を深めるのに役立ちます。

 

②データの要約と圧縮

 

大量のデータを扱う場合、クラスタリングを用いてデータを要約したり圧縮したりすることができます。これにより、データの管理が容易になります。

 

③異常値の検出

 

クラスタリングを用いると、データの中から異常な値や異常なパターンを見つけ出すことができます。これは、異常検知や詐欺検出などのタスクに役立ちます。

 

④類似したデータのグループ化

 

クラスタリングを用いると、類似した特徴を持つデータを一緒にグループ化することができます。これは、推奨システムや顧客セグメンテーションなどのタスクに役立ちます。

クラスタリングの種類と手法

クラスタリングは大きく分けて、階層的クラスタリングと非階層的クラスタリングの2つに分けることができます。それぞれについて見ていきましょう。

 

階層的クラスタリング

 

階層的クラスタリングは、家系図を作るようなものです。最初は各人(データ点)が別々にいますが、徐々に家族や親戚(グループ)としてまとめていきます。最終的には全員が1つの大きな家族になります。この過程を木の枝のような図(デンドログラム)で表すと、データの関係性が一目で分かります。

この手法は、データ間の類似性が明確に定義でき、データの階層的な関係性を理解したい場合に有効的です。

階層的クラスタリングの代表的な手法として、以下の4つの計算手法が挙げられます。

 

①群平均法

クラスタ間の距離を、2つのクラスタ内のすべてのデータ点の組み合わせの平均距離として計算します。外れ値の影響を受けにくく、クラスタが連鎖的に形成される「鎖効果」も起こりにくいという利点があります。しかし、大規模なデータセットに対しては計算量が大きくなる可能性があります。

 

②ウォード法

クラスタ内のデータの分散(平方和)が最小になるようにクラスタを形成します。各データ点と平均値の差を二乗した値の和を最小化することで、似たデータ同士をグループ化します。この手法は、クラスタ内の一貫性を重視する場合に適していますが、異なるサイズや形状のクラスタを識別するのは難しいかもしれません。

 

③最短距離法(単連結法)

2つのクラスタ間で最も近いデータ点同士の距離をクラスタ間の距離とします。計算量が少ない反面、外れ値の影響を受けやすい特徴があります。この手法は、非球形のクラスタを識別するのに適していますが、ノイズに敏感であるという欠点があります。

 

④最長距離法(完全連結法)

最短距離法とは逆に、2つのクラスタ間で最も遠いデータ点同士の距離をクラスタ間の距離とします。こちらも計算量は少ないですが、外れ値の影響を受けやすいです。この手法は、クラスタ間の明確な境界を必要とする場合に適していますが、クラスタのサイズが大きく異なる場合には適していないかもしれません。

 

非階層的クラスタリング

 

非階層的クラスタリングは、データを一度に複数のグループに分ける方法です。非階層的クラスタリングの代表的な手法として、以下の2つが挙げられます。

 

①K-means法

K-means法は、データを「K」個のグループに分ける方法です。まず、ランダムに「K」個の中心点を選びます。次に、各データ点を最も近い中心点のグループに割り当てます。その後、各グループの平均位置(中心)を計算し、新たな中心点とします。これを繰り返すことで、データは「K」個のグループに分けられます。

例えると、運動会でチーム分けをするようなものです。最初にキャプテン(中心点)を決め、各選手(データ点)は一番近いキャプテンのチームに入ります。その後、チームの真ん中に立つ人を新しいキャプテンとし、これを繰り返します。この繰り返しにより、最終的に指定した数のグループに分けることができます。

この手法は、クラスタの数が事前にわかっている場合や、大規模なデータセットを効率的に処理する必要がある場合に適しています。しかし、初期の中心点の選択によっては、最終的な結果が大きく変わる可能性があります。

 

②DBSCAN

DBSCAN(Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise)は、データの「密度」に基づいてグループを作る方法です。近くにたくさんの他のデータ点がある場所を「高密度」、そうでない場所を「低密度」と考えます。高密度の領域を同じグループとし、低密度の領域をグループの間の「ギャップ」とします。

例えると、人口密度に基づいて都市部と田舎を分けるようなものです。人がたくさん集まっている場所(高密度領域)を都市、人が少ない場所(低密度領域)を田舎とするということです。

この手法は、クラスタの数や形状を事前に知らない場合や、ノイズを含むデータを扱う場合に適しています。しかし、パラメータの選択が結果に大きな影響を与え、適切なパラメータを見つけるのは難しいかもしれません。

 

これらの手法は、それぞれ異なる種類のデータや問題に対して最適です。どの手法を選ぶべきかは、データの性質や分析の目的によります。データの性質や分析の目的に応じて適切なアルゴリズムを選択することが重要です。

クラスタリングのメリット

クラスタリングは、データ分析の現場で多くのメリットをもたらします。ここでは、主なメリットを5つ紹介します。

 

①データの構造化

 

大量のデータを意味のあるグループに分けることで、データを理解しやすくなります。例えば、顧客のデータがたくさんある場合、それらを似た特性を持つグループに分けることで、どのような顧客がいるのかを見つけることができます。

 

②異常検知

 

通常のパターンから外れたデータポイントを特定することで、不正行為の検出やシステム障害の予測などに役立ちます。

 

③顧客セグメンテーション

 

顧客の行動パターンや特性に基づいてグループ分けを行うことで、それぞれのグループに合わせたターゲットマーケティングの精度を向上させることができます。

 

④新しい知見の発見

 

データを分類することで、これまで気づかなかった関係性や傾向を明らかにすることができます。これにより、ビジネスの新たな機会を見つけることができるかもしれません。

 

⑤データの圧縮

 

大規模なデータセットを代表的なクラスタに要約することで、データの扱いやすさが向上し、計算コストを削減することができます。

クラスタリングの注意点

クラスタリングを効果的に活用するためには、いくつかの注意点があります。

 

①クラスタ数の決定

 

K-means法などでは、事前にクラスタ数を指定する必要があります。適切なクラスタ数を選択しないと、有意義なグループ分けができない可能性があります。

 

②データの前処理

 

外れ値の処理、欠損値の補完、特徴量のスケーリングなど、適切な前処理が重要です。例えば、異なるスケールの特徴量が混在している場合、正規化や標準化を行う必要があります。

 

③結果の解釈

 

クラスタリング結果が常に明確な意味を持つとは限らないため、慎重な解釈が必要です。ドメイン知識を活用し、結果の妥当性を検証することが重要です。

 

④計算コスト

 

大規模なデータセットや高次元のデータを扱う場合、計算時間が膨大になる可能性があります。必要に応じて、サンプリングや次元削減などの手法を検討する必要があります。

 

⑤結果の安定性

 

初期値の設定や、データのわずかな変化によって結果が変わる可能性があります。複数回の試行や異なるアルゴリズムの比較を行うことで、結果の安定性を確認することが推奨されます。

クラスタリングの活用事例

クラスタリングは、様々な分野で幅広く活用されています。この章では、クラスタリングの活用事例を紹介します。

 

①顧客セグメンテーション

 

Eコマースや小売業では、顧客の購買行動データを用いてクラスタリングを実施されています。年齢、性別、購入金額、購入頻度、商品カテゴリーなどの特徴量を基に、「頻繁に少額購入する若年層」「高額商品を好む中年層」「季節限定商品購入者」などのセグメントに分類します。この分析結果を活用することで、各セグメントに最適化されたマーケティング戦略の立案や、パーソナライズされた商品推奨が可能となり、顧客満足度と売上の向上につなげています。

 

②文書分類と話題抽出

 

大量のテキストデータ(ニュース記事、SNS投稿、顧客レビューなど)を内容に基づいて自動的に分類します。単語の出現頻度や文の構造などの特徴を用いてクラスタリングを行い、「技術関連」「経済関連」「エンターテインメント」といったカテゴリーに分類します。さらに、各クラスター内の特徴的な単語を抽出することで、話題やトレンドの把握も可能になります。これにより、効率的な情報整理、検索性の向上、さらにはコンテンツ推薦システムの精度向上にも貢献しています。

 

③異常検知と予防保全

 

製造業や設備管理において、センサーから得られる多次元データ(温度、振動、音、電流など)を用いてクラスタリングを行います。正常な動作状態をいくつかのクラスターとして学習し、それらから著しく逸脱するデータポイントを異常として検出します。例えば、工作機械の振動パターンが通常とは異なるクラスターに分類された場合、早期に故障の兆候を捉えることができます。これにより、突発的な機械の故障を防ぎ、計画的な保守が可能となり、ダウンタイムの削減やコスト削減につながります。

 

④医療画像解析

 

医療分野では、MRIやCTスキャンなどの画像データに対してクラスタリングを適用します。画像の各ピクセルやボクセル(3D画像の場合)の輝度、テクスチャ、位置情報などの特徴量を基に、類似した特性を持つ領域をグループ化します。これにより、腫瘍や異常組織を自動的にセグメンテーション(領域分割)し、その形状や大きさを定量化することが可能になります。さらに、正常組織と異常組織のパターンを学習することで、新たな画像に対する異常検出の精度も向上します。この技術は、医師の診断支援や治療計画の立案に貢献し、医療の質の向上と効率化を促進します。

まとめ

クラスタリングは、機械学習の重要な技術として、データ分析の現場で広く活用されています。その基本概念は単純ですが、適切に活用することで、複雑なデータセットから有益な洞察を得ることができます。

この記事では、クラスタリングの基本概念、主要なアルゴリズム、メリットと注意点、そして活用事例について解説しました。

クラスタリングは、データサイエンスの基本的なツールでありながら、常に進化し続けている技術です。この技術を適切に理解し、活用することで、データ駆動型の意思決定や革新的なサービス開発が可能となります。データサイエンティストやビジネス関係者は、クラスタリングの基本を押さえつつ、最新の動向にも注目し、継続的に学習を重ねていくことが重要です。

クラスタリングは、今後も機械学習の重要な一角を占め続けると考えられます。その進化を追いかけ、積極的に活用していくことで、データから価値を創造し、ビジネスや社会に貢献していくことができるでしょう。

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