プロンプトエンジニアリングとは・ChatGPTの活用事例も解説

機械学習

2023.11.01

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近年、急速に進化したAIが私たちの生活を変えつつありますが、AIは人の指示を常に正確に捉えるわけではありません。この課題を克服する鍵がプロンプトエンジニアリングです。プロンプトエンジニアリングの技術を使えば、AIへの指示を効果的に最適化でき、ChatGPTのような生成AIで、求める回答や結果を的確に引き出せます。
この記事では、プロンプトエンジニアリングの主な役割、プロンプトエンジニアリングの習得に必要な知識とスキル、ChatGPTに活用できるプロンプトエンジニアリングの例などについて解説します。プロンプトエンジニアリングの学習を始めたい方はぜひ参考にしてください。

1.プロンプトエンジニアリングとは

まずはプロンプトエンジニアリングに関する基本的な概念などについて説明します。

 

(1)プロンプトとは

 

プロンプトは、AIやGPT-4のような言語モデルへの指示や命令として使用されるものです。ChatGPTのような対話型の生成AIは、指定されたプロンプトに従いテキストを生成します。

例えば、ChatGPTに「プロンプトとは?」というプロンプトを入力すると、関連する回答を出力します。

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(2)プロンプトの要素について

 

AIが生成するテキストの精度を高めるためには、プロンプトの指示が明確であることが重要です。

効果的なプロンプトを作成するには、以下の要素を考慮することをおすすめします。

・命令:モデルに実行してほしい特定のタスクや指示(例: 「文章を要約」してください)

・文脈:質問やタスクに関連する背景情報や文脈(例: 「科学論文」の中で、文章を要約してください)

・入力データ:応答を得たい具体的な質問や入力(例: この研究の「結果と考察」について、文章を要約してください)

・出力指示子:期待する出力のタイプや形式(例: このレポートを「3文以内で要約」してください)

参考URL:Elements of a Prompt(DAIR.AI公式サイト)

 

(3)プロンプトエンジニアリングとは

 

プロンプトエンジニアリングは、AIの出力を特定のタスクや目的に合わせて最適化する手法です。AIのパフォーマンスを高めたり、作業を効率的に行ったりするのに役立ちます。

プロンプトエンジニアリングに関する多くの研究が進められており、ChatGPTの開発者であるOpenAIではGPTのベストプラクティスを公開しています。

参考URL:GPT best practices(OpenAI公式サイト)

 

プロンプトエンジニアリングを学ぶには、以下のサイトが参考になります。

参考URL:

Prompt Engineering Guide(DAIR.AI公式サイト)

Your Guide to Communicating with Artificial Intelligence(Learn Prompting)

 

プロンプトエンジニアリングのスキルを習得することは、AIをより効果的に使いこなすための鍵となるので、AIを使いこなしたい方はぜひ上記のサイトで学習を進めてみてください。

2.プロンプトエンジニアリングの主な役割

プロンプトエンジニアリングが果たす主な役割として以下の2つがあります。

 

・AI生成のパフォーマンス向上

・作業の効率化

 

それぞれの役割について説明します。

 

(1)AI生成のパフォーマンス向上

 

プロンプトエンジニアリングの重要な役割の一つは、適切なプロンプトの設計により、AI生成のパフォーマンスを向上させることです。

生成AIの出力はプロンプトの質に強く影響を受けるため、不適切なプロンプトは品質の低下を引き起こす可能性があります。一方、良質なプロンプトは出力の精度を大きく向上させます。

 

一般的に、AIは数学の文章問題を解くことを苦手としています。

「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」の論文によると、「Let’s think step by step」というフレーズをプロンプトに追加するだけで、正確性は18%から79%へと大幅に向上することが示されています。

参考論文:Large Language Models are Zero-Shot Reasoners

 

このように、プロンプトエンジニアリングはAIの生成品質を高める鍵となります。

 

(2)作業の効率化

 

作業の効率化もプロンプトエンジニアリングの重要な役割の一つです。

適切なプロンプトの設計により、さまざまな作業を効率よく行うことができます。具体的には以下のような作業です。

・テキスト要約:記事や研究論文を簡潔に要約

・情報抽出:記事や論文から特定の情報を抽出、必要情報の即時アクセス

・質問応答:与えられた情報や背景に基づいて応答、ユーザーが求める情報を即座に提供

・テキスト分類:テキストを特定のカテゴリに分類

・コード生成:プロンプトを使用してコードを生成可能

 

ただし、AIからの回答は必ずしも正確であるとは限りません。重要な情報や判断を求める場合は、他の情報源や専門家の意見も参照することをおすすめします。

参考URL:Examples of Prompts(DAIR.AI公式サイト)

3.プロンプトエンジニアリングの習得に必要な知識とスキル

プロンプトエンジニアリングの習得には、主に以下の知識とスキルが求められます。

 

・自然言語処理の基本理解

・Pythonなどのプログラミングスキル

・機械学習のフレームワークを扱うスキル

・試行錯誤を繰り返す力

 

それぞれについて説明します。

 

(1)自然言語処理の基本理解

 

自然言語処理(NLP)は、人間の言語(自然言語)をコンピュータが理解するための技術です。NLPに関する基本的な知識は、効果的なプロンプト設計に欠かせません

 

NLPに関する理解を深めることで、AIが言語をどのように解析・処理するか明確になります。この知識は、AIの思考方法を把握し、結果として出力の調整やプロンプトの最適化に貢献します。

 

(2)Pythonなどのプログラミングスキル

 

プロンプトエンジニアリングを効率よく行うためには、Pythonをはじめとするプログラミングスキルが役立ちます。

プログラミングスキルがあると、AIモデルの実装やプロンプトのテスト、さらに結果の分析などが効率よく進められます。

 

Pythonは、その柔軟性や多数のライブラリが特長で、AIや機械学習の分野でよく用いられます。プロンプトエンジニアリングの作業においても、Pythonのプログラミングスキルは複雑なタスクを円滑に進行させる鍵となります。

 

(3)機械学習のフレームワークを扱うスキル

 

プロンプトエンジニアリングの効果を最適化するには、TensorFlowやPyTorchのような主要な機械学習フレームワークを扱うスキルが欠かせません。

 

機械学習のフレームワークについての深い知識があれば、プロンプトの調整やモデルの最適化がより効果的に行えます。機械学習のフレームワークを扱うスキルは、プロンプトエンジニアリングの品質を向上させる鍵となります。

 

(4)試行錯誤を繰り返す力

 

プロンプトエンジニアリングを成功に導くには、試行錯誤を恐れず行う姿勢が重要です。プロンプトエンジニアリングはまだ新しい分野であり、はじめから理想の結果を得ることは難しいからです。

モデルの反応を確認するには、プロンプトを入力し、結果を観察する必要があります。設定を少し変更するだけでも、出力に大きな違いをもたらすことがあるため、多角的なテストが求められます。

一度の試行で完璧な結果を期待するのではなく、継続的な試行錯誤が最適なプロンプトを生み出します。この持続的な取り組みが、AIの能力を最大限に発揮する鍵となります。

4.ChatGPTに活用できるプロンプトエンジニアリングの例

ChatGPTに活用可能なプロンプトエンジニアリングの例を紹介します。

 

(1)Zero-shot Prompting

 

Zero-shot Promptingは、解答例や背景知識を与えずに、タスクを実行させる手法です。

事前学習された大規模言語モデルは、大量のデータで訓練されているため、すでにさまざまなタスクを解決する能力を持っています。

ChatGPT(GPT-4)を使用したZero-shot Promptingの例を示します。問題文は「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」から抜粋し、日本語に翻訳しています。

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(2)Few-shot Prompting

 

Few-shot promptingは、いくつかの解答例を与えてタスクを実行させる手法です。

大規模言語モデルは、与えたサンプルをもとに、新しい情報や知識を迅速に取り入れ、そのタスクを解決する方法を学習します。

 

ChatGPT(GPT-4)を使用したFew-shot Promptingの例を示します。問題文は「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」から抜粋し、日本語に翻訳しています。

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(3)Chain-of-Thought Prompting

 

Chain-of-thought promptingは、段階的な指示や手順を与え、推論タスクの解法を学習させる手法です。より緻密な思考プロセスが求められる問題に対しても、効果的な回答が得られるようになります。

 

ChatGPT(GPT-4)を使用したChain-of-Thought Promptingの実例を示します。問題文は「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」から抜粋し、日本語に翻訳しています。

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(4)Zero-shot-CoT Prompting

 

Zero-shot-CoTは、Zero-shot PromptingとChain-of-Thought Promptingの組み合わせたプロンプトエンジニアリングの手法です。”Let’s think step by step”というフレーズを用いることで、大規模言語モデルの持つ知識をフル活用し、推論タスクの解決を目指します。

 

「Large Language Models are Zero-Shot Reasoners」の論文によると、この手法を使うと正確性が18%から79%へ大幅に向上するとのことです。

 

ChatGPT(GPT-4)を使用したZero-shot-CoT Promptingの実例を示します。問題文は前述の論文からの抜粋で、日本語に翻訳しています。

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(5)Generate Knowledge Prompting

 

Generated Knowledge Promptingは、大規模言語モデルが生成する知識をプロンプトとして利用する手法です。モデルが保有する知識を最大限に引き出して、タスクの解決を目指します。

 

Generate Knowledge Promptingを用いるための手順は以下の2つです。

・AIを用いて知識を生成

・生成した知識をプロンプトとして質問

ChatGPT(GPT-4)を用いたGenerate Knowledge Promptingの実例を示します。

この内容は、「Prompt Engineering Guide」を参考にしています。

 

参考URL:Generated Knowledge Prompting for Commonsense Reasoning

 

まずは、AIから知識を生成します。

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次に、生成した知識をプロンプトで使用して質問します。

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まとめ

この記事では、プロンプトエンジニアリングの主な役割、プロンプトエンジニアリングの習得に必要な知識とスキル、ChatGPTに活用できるプロンプトエンジニアリングの例などについて解説しました。

 

プロンプトエンジニアリングは、AIや言語モデルへの指示や質問(プロンプト)を最適化する技術として注目されています。ChatGPTをはじめ、さまざまなAI技術が普及する中、プロンプトエンジニアリングを活用することで、パフォーマンスと作業効率を向上させることができます。その習得には、自然言語処理の知識、プログラミングスキル、機械学習のフレームワークを扱うスキルなどが求められます。

 

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