初心者でもわかる!クラウドAIについてわかりやすく解説

データサイエンス

2024.07.10

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近年、機械学習やディープラーニングなどのAI技術が飛躍的に進化し、画像認識、音声認識、自然言語処理など、さまざまな分野で実用化が進んでいます。クラウドAIは、従来のAIとは異なる新しい形態のAI活用方法で、さまざまな分野で注目を集めています。 この記事では、クラウドAIの概要から具体的な活用事例までを初心者の方にもわかりやすいように解説します。

クラウドAIとは

クラウドAIとは、AIの機能をクラウドを介して提供・利用するシステムのことを指します。

クラウドとは、インターネットに接続されたコンピューター上の仮想的な領域のことで、そこにあるコンピュータ資源(ストレージ、CPU、ソフトウェアなど)をインターネット経由で利用できるサービスを指します。クラウドAIはこのクラウド上に用意されたAI機能を、ユーザーがインターネットを介して利用するシステムです。

従来の方式では、企業や組織がAIシステムを構築するためにサーバーなどの専用の機器を自社で用意する必要がありました。しかし、クラウドAIではそういった設備を準備する必要がなく、インターネットさえ接続できれば、どこからでもAIのリソースにアクセスが可能になります。このように、クラウドAIはAIを利用する上での敷居を大きく下げてくれます。

 

代表的なクラウドAIサービスとして、AmazonのAmazon Web Services(AWS)、MicrosoftのMicrosoft Azure、GoogleのGoogle Cloud、IBMのIBM Cloudなどが挙げられます。これらのIT大手はインターネット上に巨大なクラウドコンピューティング環境を構築し、その中でAIをはじめとするさまざまなクラウドサービスを提供しています。

クラウドAIベンダーが提供するAIリソースには、AIモデル、AIツール、トレーニングデータセットなどがあります。

 

  • ・AIモデル:画像認識、音声認識、自然言語処理などの機能を実現するAIのプログラムのこと 
  • ・AIツール:AIモデルの構築や評価、運用を支援するためのツール 
  • ・トレーニングデータセット:AIモデルを学習させるための大量のデータ

 

ユーザー企業は、自社のニーズに合わせてこれらのAIリソースを組み合わせて利用することができます。新規にAIシステムを構築する必要はなく、クラウド上である程度用意されたAIリソースを選んで利用するだけで済みます。

クラウドAIのメリット

ここでは、AIシステムを自社で構築するのではなく、クラウドAIを導入することのメリットを紹介します。

 

①手軽な導入

 

従来の企業内にAIシステムを導入する場合、AIの専門知識を持った人材の確保や、AIシステムを構築・運用するための専用のハードウェア(サーバーやGPUなど)を用意する必要がありました。しかし、クラウドAIではそういった準備が不要です。クラウドAIベンダーから提供されるAIリソースを、インターネット経由でそのまま利用するだけでAIシステムが導入できるためです。AIの専門知識が乏しい中小企業でも、気軽にAIを導入できるようになったといえます。

 

②低コスト

 

自社でAIシステムを構築する場合と比べ、低コストで済みます。

従来の企業内にAIシステムを自社で構築する場合、専用のハードウェア導入費用、AIソフトウェアのライセンス料、AIエンジニアの人件費など、多額のコストがかかります。一方クラウドAIでは、クラウド上であらかじめ用意されたAIリソースを利用するだけなので、こういったコストをほとんど抑えられます。基本的にはクラウドAIサービスの利用料金だけの支払いで済むため、大幅にコストを削減できます。特に中小企業にとっては、AIを低コストで導入できるメリットは大きいでしょう。

 

③スケーラビリティ

 

ニーズに応じてリソースを柔軟に拡張できるため、効率的な運用が可能です。

クラウドAIでは、事業拡大などに伴いAIリソースを増やしたい時に、すぐにリソースを追加できます。逆に一時的に多くのリソースが不要になれば、削減することもできます。このようにクラウド上のリソースを柔軟に調整できるのがスケーラビリティの利点です。従来の自社AIシステムだと、ハードウェアの増設や入れ替えが必要になり、柔軟性に欠けがちでした。クラウドAIではリソース供給が機動的にできるため、需要変動に合わせて効率よく運用できます。

 

④最新のAI活用

 

AIは日々進化を遂げている分野で、新しいモデルやアルゴリズムが次々と登場しています。従来の自社AIシステムでは、最新技術に追随するのが難しい面がありました。しかし、クラウドAIでは、ベンダー側がAIリソースを常に最新の状態に保ってくれます。ユーザー側は新しいAIモデルやツールが提供されれば、すぐに切り替えて利用することができます。このようにクラウドAIなら、いつでも最先端のAI技術を活用し続けられるメリットがあります。

クラウドAIのデメリット

前章ではクラウドAIを導入するメリットを紹介しましたが、デメリットもあります。ここではクラウドAIを導入した場合のデメリットについて紹介します。

 

①ベンダーロックイン

 

特定ベンダーのサービスに依存してしまい、乗り換えが困難になるリスクがあります。

クラウドAIを利用するにあたり、AWSやAzure、GCPなどのベンダーを1社選択する必要があります。しかし、一旦特定のベンダーを選んでしまうと、そのベンダー独自の仕様やフォーマットにあわせてシステムを構築することになり、後から別のベンダーに乗り換えるのが非常に難しくなります。これをベンダーロックインと呼びます。自社でAIシステムを構築する場合は、そのようなロックインのリスクはありません。ベンダー側の価格変更や性能低下など、何らかの理由でサービスに不満が出た場合、乗り換えが困難になるデメリットがあります。

 

②セキュリティリスク

 

重要データをクラウド上に置くため、データ漏洩などのセキュリティリスクが高まります。

クラウドAIを利用するには、自社の機密データやAIモデルなどをクラウド上にアップロードする必要があります。しかし、このデータがクラウド側で漏洩や不正アクセスされるリスクは避けられません。セキュリティ対策は講じられていますが、完全な安全性は保証されていません。自社のデータセンターに比べると、データのセキュリティ管理が自社の手を離れてしまうため、リスクは高まります。機密情報が含まれるデータを扱う企業は特にこの点に注意が必要です。

 

③ネットワーク依存

 

クラウドにアクセスするためネットワーク切断時にサービスが利用できなくなります。
クラウドAIはインターネットを経由してクラウド上のリソースを利用するため、ネットワーク環境に完全に依存してしまいます。ネットワーク障害や回線トラブルでインターネットにアクセスできなくなった場合、クラウドAIが利用できなくなってしまいます。一方、従来の自社AIシステムならネットワーク環境に左右されることはありません。ネットワーク環境が安定している場所でのみクラウドAIが利用できるというデメリットがあります。

クラウドAIとエッジAIとの違い

クラウドAIとセットで「エッジAI」という言葉も聞いたことがあるのではないでしょうか?ここでは、クラウドAIとエッジAIの違いについて説明します。

 

エッジAIの概要

 

エッジAIとは、AIの処理をデバイス側(エッジ側)で行う方式のことです。

エッジAIは、スマートフォンやセンサー、カメラなどのエッジデバイス(端末側)にAIの機能を備え込むことで、クラウドを経由せずにデバイス単体でAIの判断や処理を行うことができる方式です。AIモデルやデータ処理がすべてデバイス側で完結するため、リアルタイム性が求められる用途に適しています。

 

クラウドAIとの使い分け

 

リアルタイム性が求められる用途ではエッジAI、大量データ処理ではクラウドAIが有利です。

エッジAIは、ドローンの自動操縦や自動運転車の障害物回避、スマートスピーカーの音声認識など、リアルタイムでの即時処理が必要な場面で有利です。クラウドを経由せずにデバイス側で処理が完結するため、ネットワークの遅延の影響を受けません。

一方、クラウドAIは計算リソースが非常に大きいため、大量の画像やデータの処理に適しています。膨大な学習データからAIモデルを構築したり、あるいはモデルを使って大量の画像を高速で認識・処理したりする用途に向いています。

このようにエッジAIとクラウドAIにはそれぞれ長所と短所があり、用途に合わせて使い分けて活用することが理想的でしょう。

クラウドAIの活用事例

クラウドAIを活用することでは、多くの企業が日々の業務に革新をもたらしています。この技術は、データ分析、自動化、機械学習など、さまざまな分野で実践されており、その効果は数々の成功事例で証明されています。以下に、クラウドAIを活用した事例をいくつか紹介します。

 

①チャットボット

 

サッポロビールは、JBCC株式会社が提供している「CloudAIチャットボット」を導入し、社内問い合わせの効率化に成功しています。このチャットボットはMicrosoft Teamsと連携しており、社員がMicrosoft Teamsから使用することができます。  導入前の課題として、社員や管理部署に対する問い合わせによるストレスがあったことが挙げられます。これを解決するために、チャットボットを導入し、問い合わせのストレスを軽減しました。導入後の効果としては、利用者の6割が問い合わせのストレスが減ったと回答し、管理部署での業務工数は増加しながら質の変化した質問に対応できる余裕が出てきました。また、チャットボットは社内FAQサイトから日々自動的にデータを反映し、社内マニュアルなどの文書からも情報を提供することができます。これにより、社員は必要な情報を迅速に得ることができるようになりました。サッポロビールのこの活用事例は、AI技術を使った効率的なコミュニケーションシステムの実現例として注目されています。他社もこのような技術を採用することで、業務の効率化や従業員の満足度向上に貢献することが期待されます。

参考:【サッポロビール株式会社 様】Microsoft Teamsで使えるAIチャットボットで社内問合せを効率化|JBCC

 

②医療分野 

 

医療分野において、クラウドAIは画像認識や動画監視、顔認証などの分野で活用されています。これらの技術は、カメラによって捉えられた画像や動画から重要な情報を抽出することができます。特に、医師が使用するX線やMRIなどの画像では、クラウドAIが異常を早期に検出し、診断のサポートをしています。

富士フイルムが提供する医療クラウドサービスは、このような技術を活用しており、過去の症例データを学習させたAIが新しい画像から異常を検出し、検出箇所のマーキングやレポート作成を支援しています。その結果、診断プロセスは効率的になり、患者の治療が迅速化されています。

クラウドAIによる画像診断技術の導入は、医療サービスの向上に大きく貢献しており、将来的にはより多くの人々が素早く治療を受けられるようになると期待されています。

参考:医療クラウドサービス|富士フイルム

 

③需要予測

 

スーパーマーケット「ライフ」は、生鮮部門においてAI需要予測による自動発注システムを導入しました。このシステムは、BIPROGYの発注自動化サービス「AI-Order Foresight」を活用しており、全304店舗で稼働を開始しています。AI-Order Foresightは、販売実績、気象情報、特売企画情報などの各種データを基に、小売店舗における日々の商品発注数を自動算出するサービスです。このシステムの導入により、従業員の経験やスキルに依存しない店舗運営が可能となり、業務負荷が軽減されます。これにより、ライフは生鮮部門での発注作業効率化と廃棄ロス削減を図ることができるようになりました。

参考:ライフの生鮮部門、AI需要予測による自動発注システムが2024年4月までに全304店舗で稼働|IT Leaders

まとめ

この記事では、初心者の方にも分かりやすいように、クラウドAIの基本的な仕組みやメリットデメリット、様々な活用事例について解説しました。クラウドAIは導入のしやすさや、クラウドAIベンダーが提供する膨大なAIリソースによって今後も多くの分野で革新をもたらしていくでしょう。

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