データサイエンティストになるためには? 必要なスキルや学習方法を解説
データサイエンティストとは、データを分析してビジネスに役…
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データサイエンス
2023.11.15
ここ数年で「人的資本」に対する社会的関心は急速に高まっています。その理由は、企業の経営資源としての「人」の重要性がより一層高まっているからです。欧米では人的資本の情報開示に向けた取り組みが着々と進んでおり、この世界的なトレンドを受けて、日本でも人的資本の情報開示に向けた動きが進んでいます。
この流れの中で、人事部門が扱う主なデータとして、以下のものが挙げられます。
・基本的な情報(氏名、住所、入社年度、所属など)
・職務の内容
・スキル、資格、経歴
・人事評価
・給与
・勤怠
これらのデータは人事データとも呼ばれます。人事データを分析し、適切に活用することにより客観的かつデータドリブンな人材マネジメント戦略を実現できます。具体的な活用方法の例をいくつか紹介します。
人事データを活用することで、客観性の高い人事評価が可能になります。
人事評価について「上司の主観により決まってしまうので、あまり意味がないもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。実際に、直近の成果や目立つ特徴に評価が引っ張られる「ハロー効果」と呼ばれる現象もあり、主観での評価の妥当性は問題視されています。
人事データを用いると、人の主観に依存しない公正で客観性の高い評価を実現できる可能性があります。例えば、これまでの業務内容に関するデータがあれば、期初に立てた目標に対する達成率を定量的に評価できます。目標やこれまでの成果が定量化されていることが前提ですが、これにより客観性の高い評価が実現できます。客観的かつ定量的な評価なので、評価を受けた従業員は目標達成のために何をすべきか把握しやすくなるでしょう
必要なスキルを持つ人材を育成することは、企業の存続・発展に直結する重要な課題です。
例えば、見習いレベルのデータサイエンティストを1年間で10人増やすという目標を立てたとしましょう。従業員のスキルに関するデータが整備されていれば、対象となる従業員の人数や、各従業員に対して重点的に教育すべき内容を定量的に把握できます。目標と現状が定量的に把握できるため、効率的な教育・育成計画を立てられるでしょう。
人事データを用いれば、適切な人材配置を割り出し、人事異動計画の立案につなげることが可能です。スキルや資格など、従業員の能力に関するデータが整備されていれば、どの部署にどのようなスキルを持つ人材が在籍しているかを把握できます。各従業員が持つ能力を最大限に発揮できるような人材配置や人事異動の計画を立案できるでしょう。例えば、DX推進を計画している部署に、データサイエンスに関するスキルを有している従業員を異動させるなどの施策が考えられます。
人事データを有効活用すれば、組織の生産性と従業員のエンゲージメントを最大化させる、適材適所な人材配置を実現し、効果的な組織開発が推進されます。
従業員のスキルや能力に関する人事データの活用は、合理的な採用計画の立案にも役立ちます。ある特定のスキルを持つ従業員の人数を定量的に把握し、目標値に対して満足しているのか、不足しているのかを判断できます。例えば、データ分析のスキルを持つ人員が不足していることが分かれば、〇月までに〇人採用しようなど、必要な人員を補充するための計画を立案できるでしょう。
データサイエンスによる統計的な予測を用いると、従業員の将来の行動をある程度予測できるようになる可能性もあります。データサイエンスとは、大量のデータを収集、分析し、そのデータから有益な洞察や知見を引き出すためのアプローチのことです。
参考記事:データサイエンスとは? 活用可能な領域や何が変わるかを解説
例えば、勤怠データや入社・退社年度などのデータを用いて、離職する従業員は直前に「遅刻が多くなる」「早退が多くなる」といった傾向があるという知見を得られたとします。この場合、同様の兆候が見られる従業員は近いうちに離職する可能性があると予測し、対策を講じることが可能になります。
このように分析手法を駆使して、データから有益な洞察を引き出すことが重要であり、人事データと従業員の行動との間に何らかの関係性を見いだせれば、抜本的な対策を立案することができるでしょう。
人事部門でサーベイ結果などの人事データを分析することで、従業員の満足度やエンゲージメントの向上、離職率の低下や人件費の削減など、データを基に様々な施策を立案することができます。
データサイエンスを用いれば、従業員が次に受けるべき教育を提示するモデルを作成できる可能性があります。AmazonなどのECサイトで用いられるレコメンドシステムと類似したシステムを作るイメージです。各従業員の現在のスキルと、将来のキャリア志向や社内で期待されている役割とのギャップから、それを埋めるための教育を提示するシステムを構築できるかもしれません。あるいは、従業員が現在保有しているスキルから将来活躍できそうな分野を提案し、そこに近づくためのオリジナル教育メニューを構築するといったことも考えられます。
データサイエンスを用いると、さまざまな評価結果(業務のパフォーマンスや目標達成度合い、教育の受講履歴など)から客観的な評価指標を算出するモデルを作成できる可能性があります。具体的には、複数の評価結果を統合し、「テクニカルスキル」、「対人スキル」などの指標を提示するモデルを作ることが考えられます。
主観的な評価でなく、データに基づいた恣意性のない評価であれば、従業員の納得度も高まるでしょう。データサイエンスの中で「次元削減」と呼ばれる手法を用いると、このような指標作成を実現できる可能性があります。「次元削減」とは、多次元のデータの特性を保持しながら、低次元のデータに変換する手法のことです。
データサイエンスを利用すれば、最適な人員配置を提案し、生産性向上・人件費削減に貢献できるモデルを構築できる可能性があります。各部署で必要とされている人員の数や必要なスキルや、各従業員が有するスキルから、最適な人員配置を提案するモデルを構築できるかもしれません。
これにより、最低限の人数での業務遂行、適材適所の配置による生産性向上が実現するでしょう。
採用候補者のポテンシャルを分析することにより、その人が将来自社で活躍できる人材であるかを判断できるようになる可能性もあります。学力や性格診断(適性検査など)などの複数の評価結果をもとに評価指標を作成できれば、より客観的な評価が可能となります。
また、社内のハイパフォーマーの性質と、採用候補者の性質の類似度を数値化し、将来的に社内で活躍する可能性を持つ人材かを判断するという方法も考えられます。
前述した通り、退職者は離職の直前に「遅刻や早退が増える」など、共通した傾向がある可能性が考えられます。そのため、過去の退職者の勤怠データを用いれば、現在在籍している従業員の給与や勤怠データから、将来的な離職の確率を予測するモデルを構築できるかもしれません。
離職の確率が高い従業員には、面談を実施して現状の業務への不満がないか聞き取って対策を講じるなどの手段により離職を予防できるかもしれません。また、この知見をもとに人事評価や給与・福利厚生に関わる制度の改善を提案するなど、より抜本的な対策を検討することも可能になります。
人事領域におけるデータ活用に早くから着目して力を入れている企業として知られているのがGoogleです。
Googleの人事部門は「ピープルアナリティクス」という活動を行っています。「ピープルアナリティクス」とは、データに基づいて人事に関する業務の改善を試みる活動のことです。ハイパフォーマーの離職、新たなリーダーシップをもった人材の選定といった難しい課題に直面した際に、従来のように経験や勘で対処するのではなく、事実やデータに基づいたデータドリブンなアプローチを試みるのです。これにより、より公正で納得感のある意思決定が可能になります。
Googleの人事部門はデータに基づき、性別による給与格差がないかを検証した結果、性別による給与格差を見出しました。その原因を調査したところ、男女間の昇進率に大きな差があることがわかり、さらに調査を続けた結果、昇進するチャンスが巡ってきても自ら手を上げる女性のエンジニアの割合が低かったという事実を発見したそうです。これに対処するため、Googleは以下のような施策を実行しました。
・女性エンジニアに昇進のチャンスが訪れたら、積極的な立候補を促進する
・マネージャーに査定結果の説明責任を求める
これにより、性別による昇進率格差を是正することに成功したとのことです。
人事部門でデータサイエンス活用に取り組む際は以下のことに注意しましょう。
データサイエンスを用いた人材マネジメントプロジェクトに取り組む際には、長期的なプロジェクトとして取り組みましょう。現状把握、目標設定には多大な時間・工数を要します。また、データ分析により問題解決点を見出した後、制度変更などの具体的な改善策につなげるためには、多くの関係者を巻き込む必要があります。必然的に長期にわたるプロジェクトとなるので、長期的な視点を持って取り組むことが大切です。
明確な数値目標を設定することも重要です。明確かつ定量的な目標を定めていないと、達成率の評価や目標達成の成否の判断ができません。
「いつまでに・何を・どれくらい」など具体的に数値化した目標を定めましょう。例えば、採用活動を実施する際は、「いつまでに・どのようなスキルを持った人材を・何人」必要かを考える必要があります。
長期的なプロジェクトに取り組む際には、定期的に目標に対する達成率を評価する機会を設け、必要があれば軌道修正しましょう。
現状と目標の差を正しく評価し、課題を明確化するためには、精度の高い現状分析を行うことが求められます。例えば、「離職率が高い」という課題があった場合、「どのような年代層の離職率が高いのか」、「どの部署の離職率が高いのか」といったように、さまざまな切り口で層別し、攻め所を特定すべきです。現状分析が不十分なまま対策を立案しても、的外れな対策になる可能性があります。
人事部門におけるデータサイエンス活用をスムーズに進めるためには、専門的な知識と高度なスキルを持つ人材が必要となります。人事データを専門的に扱うHRアナリストなら、求められる役割を十分にこなすことができるでしょう。HRアナリストとはどのような職種なのでしょうか。
HRアナリストとは、データサイエンスを用いて、人事に関する課題解決に貢献するスペシャリストです。HRアナリストの「HR」とは英語で「人的資源」を意味する「Human Resource」の略です。
HRアナリストは、データサイエンスを活用して、組織の人的資源の最適化や、戦略的な意思決定をサポートする重要な役割を担います。
HRアナリストとして活躍するためには、データサイエンスに関する専門的な知識だけではなく、人事領域における適切な調査設計の方法論、人の心理行動に関する知見など、幅広い知識が求められます。
HRアナリストに求められるスキルセットを効率良く習得したい場合は、データミックスのHRアナリスト養成講座をおすすめします。
データミックスのHRアナリスト養成講座は、一橋大学ビジネススクール特任講師で、データサイエンスを活用した人事組織の研究を専門としている勝村史昭氏が監修した本格的な講座です。現場で役立つ実践的なスキルを習得し、人事に関する課題を仮説を立てて解決するための思考力を養うことができます。
この記事では、人事部門におけるデータ分析・活用の場面、人事部門でデータサイエンスを活用するメリットなどについて解説しました。
優秀な人材の定着率を高め、適材適所の人材配置・タレントマネジメントを実現するためには、データに基づいた意思決定をすることが不可欠です。データサイエンスと人事領域に精通している専門職であるHRアナリストは非常に希少価値の高い人材であり、今後は多くの企業から求められるようになるでしょう。しかし、HRアナリストは、日本国内ではまだ職業としての認知度が低く、HRアナリストを養成する講座はほとんど存在しないのが実情です。
データミックスでは、人事部門でHRアナリストとして活躍するために必要な知識やスキルを効率良く学習できるHRアナリスト養成講座を提供しています。
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