リスキリングとリカレント教育の違いと共通点について解説

キャリアアップ

2023.10.16

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近年、AI技術をはじめとしたテクノロジーが急速に進化する中、時代の変化に対応するためのスキルを習得することの重要性が高まっています。そこで注目されているのが、「リスキリング」と「リカレント教育」です。
リスキリングとリカレント教育は、ともに個人のキャリアや成長をサポートする重要な概念ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、「リスキリング」と「リカレント教育」の定義、2つの用語の違いや共通点について解説します。

1.リスキリングとは

最初に、リスキリングについて説明します。

 

(1)リスキリングの定義

 

リスキリング(Re-skilling)は、技能やスキルの再習得を表す言葉です。時代の変化に対応した新たなスキルを学ぶことを指します。リスキリングの対象となる分野は、プログラミングやデジタルツールの使用法など、ITやDXに関連する場合が多いです。

 

参考記事:リスキリングとは・何を学ぶべきか具体的な事例を交えて解説

 

(2)リスキリングの目的

 

個人にとってのリスキリングの目的は、時代の変化に対応するための新たなスキルや知識を習得することで、自身のキャリアの幅や可能性を広げることです。リスキリングに取り組むことで、自身の市場価値を高めて、安定したキャリア形成を行うことができるようになります。

一方、企業や組織にとってのリスキリングの目的は、社内のDX推進に関連することが多いです。DXとは、ビッグデータを活用したり、AI、IoTなどのテクノロジーを導入することで、業務の効率化や競争力の強化などを図ることです。DX推進に取り組むためには、データの利活用に関する専門的なスキルを持つ人材を育成・確保する必要があります。

 

(3)リスキリングという言葉が誕生した背景

 

リスキリングという用語は2020年1月に世界経済フォーラムで「リスキリング革命(The Reskilling Revolution)」が提言されたことで一気に普及しました。この宣言は2030年までに10億人の人々に、より良い教育の機会を与え、就労してもらうことを目的としています。

第4次産業革命によって情報化が加速し、新しい職業が生まれました。一方で、デジタル技術の教育を受けられない人々との格差が拡大し、貧富の差が広がるきっかけにもなりました。このような不平等をなくすために世界経済フォーラムを中心に、誰もがデジタル技術を学べる環境づくりが進んでいます。

 

このデジタル化の波は日本でも大きな影響を与えました。以前は、大学や専門学校で一度勉強しておけば、その後、新しく知識やスキルを学習せずとも、定年まで仕事に困ることはありませんでした。しかし、現在は常に進化する技術に追いつくために、学び続けることが求められています。

2010年代以降のAIの発展は著しく、あらゆる場面でAIが活用されるようになっています。特に、2022年にはChatGPTなどの生成AIが登場し、私たちの生活を一変させました。ChatGPTは対話型の生成AIで書類作成やプログラミング、アイデア出しなど多様な使い方ができます。これらのテクノロジーを仕事で使いこなせるようになるために、リスキリングが求められています。

 

(4)リスキリングの事例

 

リスキリングの実例として、株式会社富士通ラーニングメディアと日立製作所の取り組みを紹介します。

 

・株式会社富士通ラーニングメディア

株式会社富士通ラーニングメディアは、リスキリング支援のために株式会社テックピットと提携しました。株式会社テックピットは、IT技術者向けリスキリング支援サービス“Techpit for Enterprise” を運営していて、特にSIerのDX推進に向けた戦略的なリスキリングをサポートしています。

 

従来のエンジニアはインフラやフロントエンドの最新化、及びシステムの運用・保守を求められてきました。しかし、今後は活動の場をサービス・ビジネスの領域にまで拡げ、顧客や社会に新たな価値を提供することが期待されています。

 

参考URL:SIerを中心としたIT技術者向けの戦略的なリスキリング・人材育成の仕組みづくりを強化するため業務提携


・日立製作所

日立製作所では、2022年10月から、年間3億円を投じて、社員3万人を対象に、大規模なリスキリングを実施しています。

 

日立製作所は、LXPという学習体験プラットフォームを導入しています。LXPに、現在の仕事、強化したいスキルなどの情報を登録すると、その情報をもとにAIが最適なコンテンツを提案します。コンテンツはビジネスやテクニカル、語学などを含む全1万6,000コースも用意されています。社員はAIの提案を参考に、これらのコンテンツを学習することで、効果的にリスキリングできるようになっています。

 

参考URL:日立製作所 中畑英信「経営戦略に連動した人財戦略の実行(この10年の歩みとこれから)」

2.リカレント教育とは

次に、リカレント教育の説明をします。

 

(1)リカレント教育の定義

 

リカレント教育とは、仕事と学習のサイクルを繰り返すことを指します。リカレント(recurrent)は、循環を意味する言葉です。リカレント教育では、社会人となってからも仕事と学習を循環するために、学習の期間は仕事を休職または退職し、大学や専門学校などで集中して勉強するケースが多いです。

 

(2)リカレント教育の目的

 

リカレント教育の主な目的は、個人が今後のキャリアを見据え、新しい職種や業界への移行をスムーズに行うことや、既存の職業における専門性を深めることです。

現代は、学生時代に学んだ知識やスキルだけを頼りに仕事を続けることは難しい時代になりつつあります。社会人になった後も新しい知識やスキルを学習することで、キャリアの幅や可能性を広げることが求められているのです。

 

(3)リカレント教育という言葉が誕生した背景

 

リカレント教育という言葉は、1970年に経済協力開発機構(OECD)が公式に採用し、1973年に報告書「リカレント教育 -生涯学習のための戦略-」が公表され、国際的に認知されるようになりました。

現在、人生100年時代と呼ばれ、平均寿命が伸びています。そのような中、人生において1つの職種だけでなく、さまざまな職種を経験するライフプランが提唱されるようになりました。

 

実際に、政府でもリカレント教育促進に向けてさまざまな政策を行なっています。例えば、厚生労働省の支援制度として、「教育訓練給付金」や「高等職業訓練促進給付金」「公的職業訓練(ハロートレーニング)」などが実施されています。また、文部科学省では「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業」が行われています。

 

参考URL:「学び」に遅すぎはない!社会人の学び直し「リカレント教育」

 

(4)リカレント教育の事例

 

リカレント教育の事例として、AGC株式会社と三協立花株式会社の取り組みを紹介します。


・AGC株式会社

AGC株式会社では、DX推進のためにデータサイエンティスト育成研修を実施しています。この研修により、これまでの素材開発や生産、販売の知識に加えて、高度なデータ解析スキルを持つ「二刀流人財」の育成を目標にしています。また、大学と連携した研究や、博士号取得の支援も行なっています。


・三協立花株式会社

三協立花株式会社では、大学への社員派遣や外部研修を活用したリカレント教育を行なっています。他にも通信教育講座の受講奨励や資格取得に対しての報奨金支給などが行われています。


参考URL:経済産業省「イノベーション創出のためのリカレント教育 企業編 事例集」

3.リスキリングとリカレント教育の違いと共通点

ここまでリスキリングとリカレント教育について説明しましたが、これら2つにはどのような違いや共通点があるのでしょうか。

 

(1)リスキリングとリカレント教育の違い

 

リスキリングは時代の変化に対応するためのスキルを身に付けることを目的としており、DXと同じ文脈で語られることが多いです。現在、幅広い業界で多くの企業がDX推進に積極的に取り組む動きがあります。この動きに伴い、DX推進に必要なスキルを持つ人材が求められているのです。

 

一方、リカレント教育は人生100年時代を見据えた取り組みという意味合いが大きく、人生における労働の期間が長期化する中、一つの仕事に縛られない働き方を目指しています。

 

(2)リスキリングとリカレント教育の共通点

 

リスキリングとリカレント教育は社会人になってからの新たな学習という点では同じです。

 

現在、多くの企業でDXが推進されるようになりました。また、人間の平均寿命が長くなり、一つの業種だけで定年まで働き続けることが難しくなっています。このような不安定な時代だからこそ、リスキリングやリカレント教育を通して新たな知識やスキルを習得することが重要です。

4.個人がリスキリングやリカレント教育に取り組むメリット

以下では個人がリスキリングやリカレント教育に取り組むメリットを紹介します。

 

(1)新しい知識やスキルを習得できる

 

リスキリングやリカレント教育を通じて、新しい知識やスキルを習得できます。これらの知識やスキルによって、個人の仕事の幅が広がり、新しい業務に挑戦することも可能になります。

 

例えば、高度なデータ分析ができるようになれば、社内に蓄積されているデータを活用して魅力的な商品やサービスの開発を提案することができます。また、デジタルマーケティングに関する専門知識を身に付ければ、商品の販売戦略を提案することができるでしょう。

 

(2)時代のニーズに合う人材として活躍できる

 

企業は常に最新の技術やスキルを身に付けている人材を求めています。リスキリングやリカレント教育に積極的に取り組むことで、企業や組織に必要な人材として組織内でのポジションを維持できるようになります。また、転職市場でのご自身の市場価値を高めることにもつながります。

 

急速なデジタル化が進んだことによって、私たちの社会はSociety5.0に向かおうとしています。Society5.0の社会とは、ネットの世界と現実世界とが融合した社会のことを指します。このような社会では、AIによる大量のデータ分析や、ロボットや自動運転の導入が一般的になりつつあります。

このような時代の変化に対応し、ビジネスの現場で活躍し続けるためには、リスキリングやリカレント教育を通じて知識やスキルをアップデートすることが求められているといえるでしょう。

まとめ

この記事では、「リスキリング」と「リカレント教育」の定義、2つの用語の違いや共通点について解説しました。

 

幅広い業界の企業がDXを推進している「DX時代」ともいえる今、特に注目されているのはDX推進の中核的な役割を担うデータサイエンティストという職業です。データサイエンティストを目指してみたいという方は、データサイエンティスト育成講座の受講を検討してみてはいかがでしょうか。

 

データミックスでは、初学者や文系出身の方でもデータサイエンティストに必要な知識やスキルを体系的に学習できるデータサイエンティスト育成講座を提供しています。

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