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もし人事担当者がデータサイエンスを学んだら

企業でのデータ活用というと、経営戦略や売り上げの予想、マーケティングなど、企業の収益に直接影響する部分での活用に注目が集まりやすく、データサイエンティストの業務としてイメージしやすいのもこういった分野ではないでしょうか。ですがそれ以外にも、社内のマネジメントや人事領域の意思決定にもデータの活用は非常に有効で、データサイエンティストの業務範囲にもなり得る分野です。

HR領域でのデータサイエンス活用

人事領域でのデータ活用は大きく分けると3つのカテゴリに分類できます。

  • 人材の採用

企業が新たに人を募集する際、応募者の選考・人材採用のプロセスでデータを活用することが出来ます。採用候補者に事前に用意したWebテスト受験やフォームにスキルその他質問事項の回答を入力してもらうことで、履歴書や口頭での質問では得られなかった資質や、特性、適性などの情報を得ることが可能です。現在企業が必要としている人物像にどれくらい合致しているかといった判断を採用担当者の感覚に依存することなく、明確な基準を設けて評価が行えます。

将来的にデータが蓄積していけば、応募時のデータと入社後の成績やパフォーマンスを統合的に分析し傾向も把握できるようになり、会社との相性や将来性といった点を考慮に入れた採用も期待できるようになります。

  • 現状の分析

社員のスキルやパフォーマンス、会社への貢献度といったことを、指標を決めて数値化し分析することで社員の期ごとや年次の評価が定量的に行えるようになります。加えて、研修や社員教育のプログラムなどで得られる効果も測定し改善が出来るようになれば、より効果的な社内の教育・人材育成も見込めるようになります。

長期的にこれらの指標がモニタリングできるようになれば、口頭での面談や通常のコミュニケーションからでは見出せない資質や仕事への取り組み方なども把握できるようになり、客観的な評価に基づいて、より適切なポジションに、より最適な資質を持った人材を配置することができるようになります。

社員の側としても自分に向いている仕事・自分の能力が活かせる仕事が回ってきやすくなることで成果も出しやすくなる上、自分がどのような指標に基づいてどう評価されたということが可視化されるため、会社からの評価に対する不公平さや不信感なども抱きにくくなります。

  • 将来の予測

データサイエンスによる予測は人事領域でも役に立ちます。これまでの業績やパフォーマンス、スキルなどを元に、潜在的なスキルや将来的な適性を判断することで、計画的で効率的な人材育成や人事異動の予定が立てやすくなります。

データを元に、従業員の会社への満足度の計測、離職しそうな社員の傾向・特徴などを分析し把握することで、優秀な人材の流出を防ぐという点でもデータを有効に活用できます。これは優秀な人材の確保だけでなく、長期的な目線での人材育成や雇用に関するコスト削減にもつながるため、人事に関する予測分析は企業にとっての将来への投資の一部ともいえるかもしれません。

先駆者はGoogle

あまり話題にあがることのない分野だけに、このような領域でデータを活用して成果をあげている企業が果たして本当にあるのかと疑問に思うかもしれません。

実は人事領域でのデータ活用に早くから注目し、最も力を入れているといっても過言ではない企業がGoogleで、人事管理にデータ主導のアプローチを取り入れるために「People & Innovation Laboratory」というラボを設立するほどに力を入れています。既に2018年にはその取り組みについて「Redefining HR using people analytics: the case of Google」(人事分析を利用した人材の再定義:Googleの場合) という研究レポートも発表し、人事領域にデータ分析を導入することで、客観的で透明性の高い定量的な意思決定が可能になると結論づけています。

また、MITとIBMが実施した調査 では、人事分析を採用した企業全体で8%の売り上げ増、営業利益24%増、従業員1人あたりの売上高58%増、といった結果をもたらしたとのことで、人事の管理や意思決定にデータサイエンスを導入することは、(特に大規模な企業にとって)非常に効果的な手段であるということが既に実証されています。

まだまだ日本では積極的に人事領域でデータサイエンスの活用を行っている企業は少なく、この領域に特化したデータサイエンティストの話題というのを耳にすることもほとんどありません。ですが、今後経営者やマネジメント層などにデータサイエンスの知識を持つ人が増えてきたり、データによる意思決定自体がより一般的になってくれば、自然と人事領域でのデータ活用も増え、データサイエンティストの活躍の場の1つにもなり得るのではないでしょうか。人事方面の仕事に興味のある方や実際の業務経験がある方は、どのようなデータを使ってどのような手法で分析をすると人事領域に効果的かといったことを意識した勉強をしてみると、今後のキャリアの幅が広げられるかもしれません。

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